借地権・底地は売却できる?地主の承諾と承諾料・借地権者に売る・第三者に売る・相続した場合・税金
この記事は、相続した借地権や底地を手放したい方に向けています。借地権(賃借権)を売るには、地主の承諾が要ります(民法612条1項)。承諾が得られないときは、裁判所が承諾に代わる許可を与える手続があります(借地借家法19条)。底地を売る場合に、借地権者の承諾を求める条文は見当たりません(明文は無い)。あなたが売りたいのが借地権か底地かで、進め方が変わります。
| 売るもの | 相手の承諾 | 根拠 |
|---|---|---|
| 借地権(賃借権) | 地主の承諾が要る。得られないときは裁判所の許可で代えられる場合がある | 民法612条1項、借地借家法19条 |
| 借地上の建物を競売などで買った人 | 地主が承諾しないとき、買った人の申立てで裁判所の許可 | 借地借家法20条 |
| 底地(土地の所有権) | 借地権者の承諾を求める条文は見当たらない(明文は無い) | 民法206条 |
| 相続した借地権 | 地主の承諾が要るかを明記した条文は見当たらない(明文は無い) | 民法896条 |
出典:e-Gov法令検索 民法・借地借家法(2026年10月2日取得)。個別の事情で結論が変わることがあるため、実際の手続きは弁護士・司法書士にご確認ください。
借地権を売るには地主の承諾が要る
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権のことです(借地借家法2条1号)。契約書や登記で、自分の借地権が地上権か賃借権かを確認してください。
賃借権の場合、民法612条1項は「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない」と定めています。同条2項は、これに違反して第三者に使わせたとき、賃貸人は契約の解除をすることができる、としています。借地権付きの建物を売ると、買った人が賃借権を引き継ぐことになるため、地主の承諾が必要になります。
借地権が地上権の場合は、民法の地上権の節(265条〜269条の2)に、譲渡に地主の承諾を要する旨の条文は見当たりません。ただし契約で別の定めがある場合があります。
承諾料はいくらか
借地借家法と民法の全文に「承諾料」の語はなく、条文に承諾料の金額の定めはありません。裁判所の許可の手続(借地借家法19条1項)には、許可を「財産上の給付に係らしめる」ことができるとありますが、金額を決める基準は書かれていません。この記事では承諾料の金額の目安は載せません。契約書に承諾料の定めがあれば、まずそれを確認してください。
買取業者に相談する方法
ラクウルの公式サイト(2026年10月2日に確認)は、買い取れる物件として、事故物件・再建築不可物件・共有持ち分物件・違反建築物件・旧耐震・築古物件・借地権・債務整理物件・長屋連棟式物件・立ち退き物件・底地・紛争物件の11種類を挙げています。自社で直接買い取るため仲介手数料などの諸費用はかからない、査定は無料(一部対象外あり)とも書かれています。
公式サイトには、借地権の売却に地主の承諾が必要かどうかや、底地の買取条件の記載はありません。相談の際に、借地権か底地か、地主の承諾の状況を伝えて確認してください。
地主が承諾しないとき(裁判所の許可)
地主が承諾してくれないときの、借地借家法の規定は次のとおりです。
| 場面 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 借地権者が建物を第三者に譲渡しようとするが地主が承諾しない | 借地借家法19条1項 | 第三者が賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないにもかかわらず承諾しないとき、裁判所は借地権者の申立てにより承諾に代わる許可を与えることができる。必要があるときは借地条件の変更を命じ、または許可を財産上の給付に係らしめることができる |
| 裁判所が考慮すること | 同条2項 | 賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、譲渡を必要とする事情その他一切の事情 |
| 地主が自分で買う | 同条3項 | 申立てがあった場合に、裁判所が定める期間内に地主が自ら建物の譲渡と賃借権の譲渡を受ける旨を申し立てたときは、裁判所は相当の対価と条件を定めて命ずることができる |
| 建物を取得した第三者 | 借地借家法14条 | 地主が賃借権の譲渡を承諾しないときは、その第三者は地主に対し、建物などを時価で買い取るよう請求できる |
| 建物を競売・公売で買った第三者 | 借地借家法20条 | 地主が承諾しないとき、その第三者の申立てにより承諾に代わる許可。申立ては建物の代金を支払った後2か月以内に限る(3項) |
出典:e-Gov法令検索 借地借家法(2026年10月2日取得)。
許可が出るかどうかは、条文のとおり「地主に不利となるおそれがない」かどうかなど、事情によって変わります。申立ての要否や進め方は、弁護士にご相談ください。
底地を売る:借地権者に売る・第三者に売る
底地とは、借地権が付いた土地の所有権です。民法206条は「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する」と定めています。底地を売るのに借地権者の承諾を求める条文は見当たりません。反対に、「底地は承諾なしに売れる」と書いた条文もなく、明文は無いということです。
借地権者に売る
借地権者が底地を買うと、土地の所有権と借地権が同じ人に集まります。条文には売買の代金の定めはなく、金額は当事者の話し合いで決まります。この記事では価格の目安は載せません。相続した底地の評価額の求め方は借地権・底地の相続税評価方法に書いています。
第三者に売る
借地借家法10条1項は、借地権は登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、第三者に対抗することができる、と定めています。民法605条の2第1項は、借地借家法10条などの対抗要件を備えた場合に不動産が譲渡されたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転する、としています。買った人は借地権が付いた土地を引き継ぎ、地代を受け取る側になります。
賃貸人たる地位の移転を借地権者に主張するには、所有権移転の登記が必要です(民法605条の2第3項)。底地が共有名義のときの売却の進め方は共有持分は売却できる?にまとめています。
相続した借地権・底地は売れるか
民法896条は「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない」と定めています。借地権も被相続人の財産に属した権利なら、相続人が承継すると読めます。
一方、借地権を相続するときに地主の承諾が要るかを明記した条文は、見当たりません。借地借家法で「相続」の語が出る条文は、居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合の36条だけで、借地権の相続には触れていません。契約書に特約がある場合もあるため、承諾の要否は断定せず、契約書を確認して弁護士・司法書士にご相談ください。
相続した借地権を売る場合は、前の節のとおり、地主の承諾(民法612条)か裁判所の許可(借地借家法19条)が関わります。相続した底地を売る場合は、前の節のとおりです。売る前に、相続登記や地代の支払い、地主・借地人への通知を済ませておく手順は、借地権を相続した場合の手続きと底地を相続した場合の手続きにまとめています。建物を解体して土地を返す方法もあります。
借地権・底地を売ったときの税金
国税庁のタックスアンサーNo.3105は、譲渡所得の対象となる資産に「土地、借地権、建物…」などが含まれるとしています。課税方法は、土地(借地権等の土地の上に存する権利を含む)および建物等が分離課税(土地建物等)です。譲渡所得の計算のしかたは、国税庁 No.3202に載っています(No.3202に「借地」の語は出てきません)。
マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除(国税庁 No.3302)では、特例の対象になる資産の一つに「上記イまたはロの家屋とともに売ったその敷地や借地権」が挙げられています。ほかの要件もあるため、使えるかどうかは空き家売却の3,000万円特別控除で確認してください。
消費税については、消費税法6条1項が別表第二に掲げる資産の譲渡等には消費税を課さないとしていて、別表第二の一に「土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け」が載っています。借地権は土地の上に存する権利の一つですが、個別の扱いは税務署・税理士にご確認ください。借地上の建物は土地ではないため、この項目には含まれません。売った金額ごとの税額の目安は家を売る税金はいくら?、手元の数字での試算は譲渡所得税の試算ツールが使えます。
借地権とは何か
相続財産の中に「借地権」や「底地」があると分かっても、通常の土地・建物とは勝手が違い、どう扱えばよいのか戸惑う方も多いのではないでしょうか。
借地権とは、他人の土地を借りてその上に建物を所有する権利のことです。戦前・戦後に多く設定されており、特に都市部の古い住宅地に多く見られます。
借地権の種類
- 旧借地法上の借地権(旧法借地権):1992年以前に設定された借地権。更新が認められやすく借地人の権利が強い
- 普通借地権:1992年以降の借地借家法で規定。存続期間は30年以上
- 定期借地権:更新がなく期間満了で必ず終了する。一般定期借地権(50年以上)・事業用定期借地権(10〜50年)・建物譲渡特約付き借地権の3種類
借地権の特徴
借地権者(土地を借りている人)は、土地を所有しているわけではなく、地代を払って使用する権利を持っています。建物は借地権者の所有ですが、土地は地主のものです。借地権は相続・売却・担保設定が可能ですが、第三者への売却・転貸には地主の承諾が必要です(旧法・普通借地権の場合)。
底地とは何か
底地とは、借地人に土地を貸している側(地主)の立場から見た土地のことです。底地は「借地権が設定された土地の所有権」を指します。
底地の特徴
- 土地を所有しているが、借地人が使用しているため自由に使えない
- 地代収入は得られるが、地代の額は契約ごとに決まっている
- 借地人の承諾なく土地を売却することは可能だが、買い手が限られる
- 借地契約の解除・明け渡しには正当事由が必要
底地は「負動産」になりやすい
底地は自由に使えない上に売却も難しく、固定資産税の負担だけが残るケースもあります。相続した場合は早期に整理方法を検討することをおすすめします。
借地権・底地の相続税評価方法
借地権・底地の相続税評価は通常の土地とは異なる方法で行います。
借地権の評価額
借地権の評価額は「自用地評価額(土地を更地で自由に使える場合の評価額)×借地権割合」で計算します。借地権割合は国税庁の路線価図に記載されており、地域によって30〜90%と異なります。
例:自用地評価額5,000万円×借地権割合60%=借地権評価額3,000万円
底地の評価額
底地の評価額は「自用地評価額×(1-借地権割合)」で計算します。
例:自用地評価額5,000万円×(1-60%)=底地評価額2,000万円
評価額と実際の売却価格の乖離
相続税評価額は税額を計算するための金額で、実際に売れる金額とは別です。底地は借地人が使っているため、買い手が限られます。この記事では売却価格の目安は載せません。
ご自身が相続した土地の評価額・借地権割合を当てはめて計算すると、借地権と底地それぞれのおおよその評価額を把握できます。
借地権を相続した場合の手続き
借地権付き建物を相続した場合の手続きを解説します。
地主への通知
借地権を相続した場合、地主への通知が慣例的に行われます。借地借家法に、借地権の相続を地主に通知することを定めた条文は見当たりませんが(契約書に定めがあればそれに従います)、相続人が変わったことを地主に伝え、今後の連絡窓口を明確にしておくことがトラブル防止につながります。
地代の継続
相続後も地代の支払いは継続する義務があります。地代を数ヶ月以上滞納すると、借地契約の解除事由となる可能性があります。相続直後は銀行口座の名義変更などで支払いが滞りやすいため注意が必要です。
借地権の相続登記
借地権のうち地上権は登記の対象になりますが、2024年4月から始まった相続登記の申請義務は所有権に限られており、借地権そのものは対象外です。不動産登記法第76条の2第1項は「所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は…所有権の移転の登記を申請しなければならない」と定めています。ただし借地上の建物は所有権なので、建物のほうは3年以内の申請義務の対象です。地上権の名義変更の登記は義務ではありませんが、地主や第三者との関係を明確にするために行っておく意味はあります。
借地上の建物を処分する場合
借地上の建物を売却する場合は地主の承諾が必要です。地主が承諾しない場合は裁判所に「借地権譲渡許可の申立て」を行うことができます(地主が承諾しないときを参照)。建物を解体して土地を返却する場合は「借地の解約」となり、地主への通知・原状回復が必要です。
底地を相続した場合の手続き
底地(借地人に貸している土地)を相続した場合の確認事項と対応を解説します。
借地契約の内容確認
相続した底地に関する借地契約書を確認します。確認すべき主な内容は以下のとおりです。
- 契約の種類(旧法・普通・定期)と存続期間
- 地代の金額と支払い方法
- 更新条件・建替え条件
- 名義書換料・更新料に関する取り決め
借地人への通知
地主が変わったことを借地人に通知します。今後の地代の振込先(相続人の口座)を伝えることが重要です。
地代収入の税務処理
底地からの地代収入は不動産所得として確定申告が必要です。相続年分は被相続人の死亡日と相続開始日に応じて按分計算が必要になる場合があります。
借地権と底地の「交換分合」による整理
借地権と底地の権利が別々の人に帰属している状態を解消する方法として、「交換分合(等価交換)」があります。
交換分合とは
地主(底地所有者)と借地人が話し合い、それぞれの権利割合に応じて土地を分割し、それぞれが完全な所有権を取得する方法です。例えば借地権割合60%・底地40%の場合、土地を6:4で分割し、借地人が6割部分を完全所有権として取得し、地主が残り4割を完全所有権として取得します。
交換分合のメリット
- 借地人・地主ともに完全所有権の土地を取得できる
- 完全所有権になれば売却・活用が容易になる
- 一定の条件を満たせば税金の特例(固定資産の交換の特例・所得税法58条)が適用される
交換分合の進め方
交換分合は当事者間の合意が必要であり、土地の分割・測量・登記費用が発生します。専門家(不動産会社・土地家屋調査士・司法書士)のサポートを受けながら進めることをおすすめします。
売却の難しさと専門業者への相談
借地権・底地はそのままでは売却が難しい不動産です。
底地単体の売却
底地を借地人以外の第三者に売却することは可能ですが、買い手は「底地専門の不動産投資家」に限られます。この記事では売却価格の目安は載せません。
借地人への売却(底地買取)
借地人が底地を買い取ることで、完全所有権の土地になります。借地人にその意思があれば、交渉を行いましょう(底地を売るを参照)。
借地権と底地を同時売却
地主と借地人が共同で、それぞれの権利をまとめて一括売却する方法もあります。買い手から見ると、土地の完全な所有権を得られる形になります。
専門業者への相談が重要
借地権・底地の整理・売却は一般の不動産会社では対応が難しいケースが多く、「底地・借地専門」の不動産会社や弁護士・税理士への相談が有効です。