共有持分は売却できる?自分の持分だけを売るときの同意・売られた側の対応・買取・税金
共有持分を売ること自体を禁じる条文は、民法の共有の節に見当たりません。自分の持分だけを売る場合、他の共有者の同意を求める条文もありません(「持分は単独で売れる」と書いた条文も無く、明文は無いのが実際です)。一方、家や土地の全体を売るには、共有者全員の同意が要ります(民法251条)。あなたが売りたいのがどちらなのかで、進め方が変わります。
| 売るもの | 他の共有者の同意 | 根拠 |
|---|---|---|
| 自分の持分だけ | 同意を求める条文は見当たらない(明文は無い) | 民法206条(所有者の処分権) |
| 家・土地の全体 | 共有者全員の同意が要る | 民法251条1項 |
| 全体を貸すなどの管理 | 持分の価格の過半数で決める | 民法252条1項 |
出典:e-Gov法令検索 民法(2026年10月2日取得)。個別の事情で結論が変わることがあるため、実際の手続きは弁護士・司法書士にご確認ください。
共有持分だけを売ることはできるか
民法206条は「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する」と定めています。共有の節(249条〜264条)を読むと、自分の持分を売るのに他の共有者の同意を求める条文は見当たりません。反対に、「共有者は持分を単独で売ることができる」と書いた条文もありません。持分の売却について、民法に明文は無いということです。
同意を求める251条は、「共有物」に変更を加える場合の条文です。持分は共有者それぞれが持つ所有権の割合ですから、持分を売ることと、共有物そのものを売ることは分けて考えます。
持分売却の現実的な問題
持分を買った人は、物件全体を自由に使えるわけではありません。民法249条1項は、各共有者に「共有物の全部について、その持分に応じた使用」を認めていて、実際の使い方は他の共有者との話し合いになります。そのため一般の買い手には持分だけを買う動機が乏しく、売り先が限られます。
共有持分の買取業者
共有持分を扱う買取業者があります。持分だけの買取は、全体を売る場合の持分相当額より低くなる傾向があるといわれ、業者ごとに査定が分かれます。この記事では価格の目安は載せません。買い取った業者が、他の共有者に持分の買取や共有物の分割を求めてくる場合もあるため、売る前に買取後の動きを確認し、複数の業者の見積りを比べてください。
買取業者の一つ、ラクウルの公式サイトの記載
ラクウルの公式サイト(2026年10月2日に確認)は、買い取れる物件として、事故物件・再建築不可物件・共有持ち分物件・違反建築物件・旧耐震や築古の物件・借地権・債務整理物件・長屋連棟式物件・立ち退き物件・底地・紛争物件の11種類を挙げています。自社で直接買い取るため仲介手数料などの諸費用はかからない、査定は無料(一部対象外あり)とも書かれています。
公式サイトには、持分だけを売る場合の条件や、共有者全員の同意が必要かどうかの記載はありません。自分の持分だけを売りたいのか、共有者全員で全体を売りたいのかは、問い合わせの際に伝えて確認してください。
共有持分が第三者に売却されたらどうなるか
共有者の一人が持分を売ると、買った人が新しい共有者に加わります。売られた側の他の共有者に関わる、民法の共有の節の主な規定は次のとおりです。
| 場面 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 使う | 民法249条1項 | 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用ができる |
| 持分を超えて使う | 民法249条2項 | 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う |
| 貸すなど(管理) | 民法252条1項 | 各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決める |
| 売却・大きな変更 | 民法251条1項 | 他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えられない(形状・効用の著しい変更を伴わないものを除く) |
| 費用の負担 | 民法253条 | 各共有者は、持分に応じて管理の費用などを負担する。1年以内に履行しないときは、他の共有者は相当の償金を払ってその持分を取得できる |
| 共有をやめる | 民法256条1項・258条 | 各共有者はいつでも分割を請求できる。協議が調わなければ裁判所に請求でき、現物分割か賠償分割、どちらもできないときは競売を命じられる |
出典:e-Gov法令検索 民法(2026年10月2日取得)。
住み続けている共有者から見ると、持分を買った人が新しい共有者として、自分の持分を超える使用の対価(249条2項)を求めたり、共有物の分割(256条)を求めたりする場面があり得ます。どうなるかは相手や物件の状況によります。
なお、共有の節に、持分が売られるときに他の共有者が先に買える権利を定めた条文は見当たりません。分割を求められた場合の裁判の流れと、相続で共有になった不動産の扱いは、共有物分割請求訴訟とはに書いています。
共有持分を売ったときの税金
土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、事業所得や給与所得などと分けて計算します(分離課税)。譲渡所得の金額は、売った金額(収入金額)から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。売った年の1月1日時点の所有期間が5年を超えると長期譲渡所得、5年以下だと短期譲渡所得に分かれ、税額の計算は別々に行います(国税庁 タックスアンサー No.3202)。
No.3202には「共有」「持分」の語は出てきません。共有名義の不動産を売った場合は、複数人の申告が必要になることがあり、税理士に相談したほうがよい場面として相続した不動産を売却した年の確定申告に挙げています。売った金額ごとの税額の目安は家を売る税金はいくら?、手元の数字での試算は譲渡所得税の試算ツールが使えます。
離婚・兄弟で共有しているとき
離婚で、夫婦の共有名義の家があるとき
自分の持分だけを売るのか、家の全体を売るのかは、前の節のとおり必要な同意が違います。これとは別に、民法768条は、協議上の離婚をした者の一方は相手方に財産の分与を請求できると定めています。協議が調わないときは、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求でき、ただし離婚の時から5年を経過したときはこの限りでない、とされています(768条2項)。
財産分与で家や持分を渡した場合は、税の上では「譲渡」に含まれます(国税庁 タックスアンサー No.3105)。詳しくは家を売る税金はいくら?の「離婚で家を渡す場合」にまとめています。持分を売るか、財産分与で整理するか、共有のままにするかは、住宅ローンの残りや名義、お二人の合意によって変わるため、一つに決めることはできません。
兄弟で相続した家が共有になっているとき
相続人が数人あるときは、相続財産は共有に属し、相続分が各相続人の共有持分になります(民法898条)。遺産分割をすべき間は、共有物の分割請求の訴え(258条)による分割はできません(258条の2第1項)。相続開始から10年を経過すると、訴えによる分割ができるようになります(同条2項、共有物分割請求訴訟とはを参照)。
遺産分割の進め方は、家を売って代金を分ける換価分割、一人が家を取得して他の相続人に代償金を払う代償分割、遺産分割の期限の各ページで整理しています。遺産分割が終わる前に、兄弟の一人が自分の持分だけを売る場合の扱いは、この記事では原文を確認できていないため、弁護士・司法書士にご相談ください。
共有名義とはどういう状態か
兄弟姉妹で実家を共有名義にしたものの、他の共有者と意見が合わず、売るに売れない・自由に活用もできないという状態に不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
共有名義とは、1つの不動産を複数人が「持分」という形で共同所有している状態を指します。相続の場面では、遺産分割協議が未了のまま法定相続分で取得した場合や、遺産分割で「実家を兄弟全員で共有する」という決定をした場合などに生じます。2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しなければ10万円以下の過料が科される可能性があります。共有名義の解消も登記義務化の対象となります。
持分とは
持分とは、共有物件に対してそれぞれの共有者が持っている所有権の割合です。例えば「2分の1」「3分の1」などの形で登記されます。持分の割合によって、固定資産税の負担・賃料収入の取得・売却時の収入分配などが決まります。
共有名義が生じやすいケース
- 遺産分割を先送りにして、法定相続分のまま登記した
- 遺言書がなく、相続人が複数いて話し合いがまとまらなかった
- 「実家を誰も相続したくない」が「売却もしたくない」という状況で暫定的に共有にした
- 夫婦や兄弟で共同購入した不動産
売却に全員の同意が必要な理由(民法251条)
共有不動産の処分(売却など)には、共有者全員の同意が必要です。これは民法251条に規定されています。
民法251条の規定
民法251条1項は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない」と規定しています。条文の語は「変更」で、「売却」とは書かれていません。家や土地の全体を売ることは、共有物の法的な状態を変える行為として、全員の同意なしにはできないと扱われます。
管理行為と保存行為はどうか
共有物に対する行為は、その性質によって必要な同意の割合が異なります。
- 保存行為(現状維持のための修繕など):各共有者が単独で実施可能
- 管理行為(賃貸借契約の締結・解除など):持分の過半数の同意で実施可能
- 変更・処分行為(売却・大規模改造など):全員の同意が必要
1人でも反対すると売れない
共有者が10人いる場合、9人が売却に賛成しても1人が反対すれば売却は成立しません。相続人が多数いる共有名義不動産は、この「拒否権」の問題で売却が進まないケースが非常に多くあります。
共有者が行方不明・認知症の場合の対処法
共有者の一部が意思表示できない状態にある場合でも、法的な手続きによって対応することが可能です。
共有者が行方不明の場合:不在者財産管理人の選任
所在が不明な共有者がいる場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てることができます。選任された管理人が行方不明者の財産管理を行い、売却に関しても家庭裁判所の許可を得て対応することができます。
共有者が認知症の場合:成年後見人の選任
共有者が認知症等で判断能力を失っている場合、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てます。成年後見人が本人に代わって売却の意思表示を行うことが可能になります。ただし、成年後見制度は一度利用すると本人の回復まで継続するため、簡単に解除できない点に注意が必要です。
共有者が行方不明のとき、民法にある裁判の手続
共有者が他の共有者を知ることができない、またはその所在を知ることができないときは、民法に次の裁判の手続があります(e-Gov法令検索 民法、2026年10月2日取得)。
- 251条2項:裁判所は、共有者の請求により、その他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判ができる
- 262条の2:所在等不明共有者の持分を、請求した共有者に取得させる裁判ができる(取得した共有者は、所在等不明共有者から時価相当額の支払を請求される)
- 262条の3:所在等不明共有者以外の共有者の全員が特定の者に持分の全部を譲渡することを停止条件として、所在等不明共有者の持分をその者に譲渡する権限を付与する裁判ができる
所在等不明共有者の持分が相続財産に属し、共同相続人の間で遺産分割をすべき場合は、相続開始から10年を経過していないと、262条の2・262条の3の裁判はできません。
共有者が死亡した場合
共有者が死亡すると、その持分がさらに複数の相続人に引き継がれる可能性があります。これが繰り返されると「数次相続」として共有者が雪だるま式に増え、手続きがますます複雑になります。
共有者全員の同意を取り付けるのが難しい場合でも、共有名義のままの状態で買い取ってもらえるかを、まずメールで相談してみる方法もあります。
共有状態を解消する方法
共有名義の状態を解消するための主な方法は以下の3つです。
方法1:協議による共有物分割
共有者全員が協議し、全員の合意のもとで共有状態を解消します。主な分割方法は以下のとおりです。
- 現物分割:土地を実際に分筆して各共有者が単独所有する(建物には不向き)
- 価格賠償(買取):共有者の一人が他の共有者の持分を買い取り、単独所有にする
- 換価分割:物件を第三者に売却して代金を持分に応じて分配する
方法2:代償分割
相続の場面で、特定の相続人が不動産を単独で相続する代わりに、他の相続人に相当額の現金を支払う方法です。不動産を受け取る相続人に十分な現金がある場合に有効です。
方法3:換価分割(売却して分配)
物件を売却して得た代金を持分の割合に応じて分配します。全員が同意した上で売却するため、通常の価格で売れるのがメリットです。
ご自身の状況に当てはめると、共有者同士の関係性や持分割合によって、現物分割・代償分割・換価分割のどれが現実的かは変わってきます。まずは共有者全員でどの方法が取れそうかを話し合ってみましょう。
共有物分割請求訴訟とは
協議がまとまらない場合、共有者は裁判所に「共有物分割請求訴訟」を提起することができます。
訴訟の流れ
共有物分割の訴えは、共有者間で協議が調わないとき、または協議ができないときに起こせます(民法258条1項)。共有物分割については、訴訟の前に調停を経ることを求める定めはありません。裁判所は、共有物そのものを分ける現物分割、または共有者の一人が債務を負担して他の共有者の持分を取得する賠償分割を命じることができ、これらができないとき、または分割によって価格が著しく下がるおそれがあるときは競売を命じることができます(同条2項・3項)。
相続で共有になった不動産は、共同相続人の間で遺産分割をすべき場合、この訴えによる分割はできません(民法258条の2第1項)。ただし、相続開始から10年を過ぎると、相続財産に属する共有物の持分についても、この訴えによる分割ができるようになります。遺産分割の請求があり、相続人が異議を申し出た場合は、この限りではありません(同条2項ただし書・3項)。
競売になるリスク
裁判所の判断で競売が命じられた場合、物件は市場価格より低い価格で売却されることが多く、共有者全員にとって不利な結果になりがちです。できる限り訴訟前の話し合いで解決することが望ましいです。
相続時に共有を避けるための対策
共有名義の問題は「なってしまってから解消する」のが大変なため、相続時点での予防が重要です。
遺言書の作成
遺言書で「誰が何を取得するか」を明確に指定することで、遺産分割協議を経ずに単独所有を実現できます。特に不動産については、共有を避ける形での分配を遺言で指定することが有効です。
遺産分割協議を先送りしない
「今は決められないから後で」と先送りすると、二次相続(子が死亡して孫が相続)でさらに関係者が増え、解決が困難になります。相続が発生したら早期に専門家(司法書士・弁護士)に相談して遺産分割協議を進めることをおすすめします。
家族信託の活用
生前に財産管理の権限を信頼できる家族に移転する「家族信託」を活用することで、認知症になった後も不動産の売却・管理を継続できる仕組みを作れます。成年後見制度の手続きを事前に備えておく手段としても有効です。