空き家を放置するとどうなる?|罰金・過料はいくら・固定資産税は本当に6倍か・特定空家と管理不全空家・相続登記をしないと
空き家を放置しただけで、いきなり罰金を科される。そうした規定は、空家法と不動産登記法の条文には見当たりません。条文にある金銭の罰は過料で、金額は3つです。特定空家等への市区町村の命令に違反すると50万円以下、立入調査や報告を拒むと20万円以下(空家法30条)。相続登記の申請を正当な理由なく怠ると10万円以下(不動産登記法164条)。お金に響くのは固定資産税です。勧告を受けると、その土地は住宅用地の特例から外れ、課税標準が価格の1/6(200㎡以下の部分)にならなくなります。ただし条文が定めているのは課税標準の特例の外れ方で、税額が何倍になるかは書かれていません。「6倍」は、課税標準の計算上の倍率として読むのが正確です。
| 確かめること | 条文に書かれていること | 根拠 |
|---|---|---|
| 「3年放置で罰金100万円」 | 空家法に罰金の規定は見当たらず、空き家の放置に100万円と定めた条文も、空家法と不動産登記法には見当たらない。3年が出てくるのは相続登記の申請期限 | 空家法30条、不動産登記法76条の2 |
| 空家法の過料 | 特定空家等の命令に違反すると50万円以下。報告をしない・虚偽の報告・立入調査を拒むと20万円以下 | 空家法30条1項・2項 |
| 相続登記の過料 | 相続で所有権を取得したと知った日から3年以内に申請。正当な理由なく怠ると10万円以下 | 不動産登記法76条の2・164条1項 |
| 固定資産税 | 勧告がされた特定空家等・管理不全空家等の敷地は「住宅用地」から除かれ、課税標準が価格の1/3(200㎡以下の部分は1/6)にならない | 地方税法349条の3の2第1項 |
| 税額の倍率 | 課税標準の特例の定めだけで、税額が何倍になるかは書かれていない。令和6〜8年度の宅地等には税額の調整の定めもある | 地方税法349条の3の2、附則18条 |
出典は e-Gov法令検索の現行版(2026年10月2日取得)。自治体の条例と、空家法・不動産登記法以外の法令の罰則は調べていません。
空き家の放置で科される罰金・過料はいくらか
空家法の罰則は第30条の過料だけで、罰金や懲役の規定はありません。条文の言葉は「過料」なので、このページも過料と書きます。
空家法の過料(第30条)
- 50万円以下:特定空家等の所有者等への、市町村長の命令(第22条第3項)に違反した場合。命令を出せるのは、勧告を受けた者が正当な理由なく措置をとらず、市町村長が特に必要があると認めたときです。
- 20万円以下:第9条第2項の、空家等の所有者等への報告の求め・立入調査に対し、報告をしない、虚偽の報告をする、立入調査を拒み・妨げ・忌避した場合。
助言・指導や勧告を受けただけの段階は、第30条の過料の対象ではありません。過料に結びつくのは、命令の違反と、報告・立入調査への非協力です。
「3年放置で罰金100万円」は本当か
条文で確かめられた範囲だけを書きます。
- 空家法で金額が書かれているのは、上の50万円以下と20万円以下の過料の2つです。罰金の規定は見当たりません。
- 「3年」が出てくるのは、相続登記の申請期限です(不動産登記法76条の2。相続で所有権を取得したと知った日から3年以内)。怠ったときの過料は10万円以下です(同法164条1項)。
- 不動産登記法で「百万円」が出てくる条文は159条の1か所だけで、登記識別情報の秘密を漏らした場合の罰金です。空き家の放置とも、相続登記の怠りとも別の話です。
- 自治体の条例や、空家法・不動産登記法以外の法令に、空き家に関する罰則があるかは、このページでは調べていません。「100万円」の噂の出どころも、ここでは特定できません。
固定資産税は本当に6倍になるのか
固定資産税には「住宅用地の特例」があり、住宅が建っている土地は課税標準が軽減されています。空き家が勧告を受けると、この特例の対象から外れます。
住宅用地の特例の内容
地方税法349条の3の2は、住宅用地の固定資産税の課税標準を、次のとおり定めています。
- 小規模住宅用地(200㎡以下の部分):課税標準となるべき価格の1/6(同条第2項)
- 一般住宅用地(小規模住宅用地以外の部分):同じく価格の1/3(同条第1項)
勧告で特例から外れます
空家法第22条第2項の勧告がされた特定空家等の敷地と、第13条第2項の勧告がされた管理不全空家等の敷地は、「住宅用地」の定義から除かれます(地方税法349条の3の2第1項)。国土交通省のガイドラインは、これを固定資産税と都市計画税の住宅用地特例の対象からの除外と説明しています。
課税標準は何倍になるか
特例から外れると、課税標準は価格そのもの(地方税法349条)になります。課税標準の比で見ると、200㎡以下の部分は1/6から1で6倍、それを超える部分は1/3から1で3倍です。
例:価格(固定資産税評価額)が3,000万円で、200㎡以下の土地
- 特例の対象:課税標準 500万円(3,000万円 × 1/6)
- 勧告で特例から外れた後:課税標準 3,000万円
税額が6倍になると言えるか
固定資産税額は、課税標準に税率を掛けて決まります(標準税率は1.4%。地方税法350条。実際の税率は市町村が定めます)。そのため、課税標準が6倍になる計算でも、税額が6倍になるとは条文からは言えません。附則18条には、令和6〜8年度の宅地等の税額について、前年度の課税標準額に当年度の価格の5%を加えた額を課税標準とした税額を超えない旨の調整の定めがあります。特例が外れた年にこの調整がどう働くかは、条文だけでは読み切れません。このページでは、税額の倍率も金額も示しません。実際の額は、市区町村の納税通知書で確認してください。
勧告がなくても特例の対象外になる場合
ガイドラインの脚注は、構造上住宅と認められない状況にある場合、使用の見込みがなく取壊しを予定している場合、居住の用に供するために必要な管理を怠っていて今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる場合などは、管理不全空家等・特定空家等に当たるかどうかにかかわらず、本来、住宅ではないため、その敷地にはそもそも住宅用地特例は適用されないとしています。
「特定空家等」に当たる条件
空家法は、「空家等」(居住その他の使用がなされていないことが常態であるものと、その敷地。第2条第1項)のうち、次のどれかの状態にあると認められるものを「特定空家等」と定めています(第2条第2項)。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
国土交通省のガイドラインは、措置を講ずるかどうかの判断は、必ずしも定量的な基準により一律に行うことになじまないとし、周辺への悪影響の程度なども考慮して総合的に判断するとしています。空家法の第22条には、特定空家等を「指定」や「認定」する手続は書かれておらず、市町村長が特定空家等に当たると認めたうえで、助言・指導から始めます。自分の空き家が当たるかどうかは、空き家のある市区町村に確認します。目安は特定空家リスク判定で確かめられます。
助言・指導から行政代執行までの流れ
特定空家等の所有者等に対する措置は、空家法第22条に、次の順で定められています。
- 助言・指導(第22条第1項)
除却、修繕、立木竹の伐採など、周辺の生活環境の保全のために必要な措置をとるよう助言または指導する。この段階に過料はありません。
- 勧告(同条第2項)
助言・指導をしてもなお状態が改善されないと認めるとき、相当の猶予期限を付けて措置をとることを勧告する。この勧告がされると、敷地は住宅用地の特例から外れます(地方税法349条の3の2第1項)。
- 命令(同条第3項)
勧告を受けた者が正当な理由なく措置をとらず、特に必要があると認めるとき、相当の猶予期限を付けて命令する。命じる前に、通知書を交付して意見書と証拠を提出する機会を与え(同条第4項)、請求があれば公開の意見聴取を行う(第5項・第6項)。命令に違反すると50万円以下の過料(第30条第1項)。
- 行政代執行(同条第9項)
命じられた措置を履行しない、履行しても十分でない、期限までに完了する見込みがないとき、市町村長が行政代執行法の定めに従い、自ら(または第三者に)その措置をする。
命令の手続を経ない措置も、条文にあります。過失がなくて命令を受ける人を確知できないときの略式の代執行(同条第10項)と、災害その他非常の場合で緊急に必要なときの措置(同条第11項)です。
代執行の費用は所有者に請求されます
ガイドラインは、代執行に要した費用は除却した空家の所有者等に請求すべきとし、国税滞納処分の例による強制徴収が認められている(行政代執行法6条1項)と説明しています。金額は、事案ごとに異なります。
「管理不全空家等」は手前の段階
2023年12月施行の改正で、特定空家等の手前に「管理不全空家等」が加わりました。市町村長は指導と勧告ができ(空家法13条)、勧告がされると敷地は特例から外れます。命令の規定はありません。判断基準・流れ・通報先は管理不全空家とは?特定空家との違いと、勧告で固定資産税の特例が外れる条件にまとめています。
相続登記をしないとどうなるか
相続した空き家を放置している場合、名義の変更(相続登記)にも期限があります。不動産登記法76条の2は、次のように定めています。
- 相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない(第1項。相続人に対する遺贈も同様)。
- 遺産の分割で、法定相続分を超えて所有権を取得した者は、遺産分割の日から3年以内に登記を申請しなければならない(第2項)。
- 正当な理由がないのに申請を怠ったときは、10万円以下の過料(164条1項)。
遺産分割がまとまらず3年以内の登記が難しいときのために、相続人である旨の申出をする制度があります(76条の3)。期間内に申出をすれば、76条の2第1項の申請義務を履行したものとみなされます(同条第2項)。ただし、その後の遺産分割で所有権を取得したときは、分割の日から3年以内に登記を申請します(同条第4項)。手続と費用は相続登記の義務化の解説で説明しています。
そのほかの放置のリスク
総務省の住宅・土地統計調査(2023年)によると、国内の空き家数は約900万戸で、空き家率は13.8%と過去最高を更新しました。管理されない空き家が増えるなか、法は所有者に次の責任を置いています。
建物が他人に損害を与えたとき
民法717条は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があって他人に損害を生じたとき、その工作物の占有者が賠償する責任を負うと定めています。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければなりません。
管理に努める責務
空家法5条は、空家等の所有者または管理者に、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう空家等の適切な管理に努めること(努力義務)を定めています。
空き家を放置しない3つの対策
勧告で特例から外れる、命令に違反すると過料になる、といった流れを避けるために取れる選択肢は、主に3つです。
対策1:活用する
空き家を賃貸住宅として貸す方法です。賃料収入を得られ、人が居住する家屋の敷地であれば住宅用地の特例の対象のままです(地方税法349条の3の2第1項)。リフォーム費用や入居者対応は別に必要になります。
対策2:売却する
手放して現金にする方法です。相続から3年10か月以内の売却なら相続税の取得費加算の特例を使える場合があり、空き家の売却には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る3,000万円特別控除」を使える可能性もあります。条件は空き家売却の3,000万円特別控除で確認できます。
仲介で売れない築古の家は、買取という方法もあります。空き家買取専門のラクウルは、公式サイトに「築年数については完全に不問です」、買取は自社買取のため「仲介手数料などの諸費用がかからず」と書いています。査定は無料で、「最短即日で現金化可能です。別途ご相談ください。」とも書かれています。買取の可否と金額は物件ごとの査定で決まり、勧告を受けた後の空き家を買い取ってもらえるかは公式サイトには書かれていません。相談するときに状況を伝えて確認してください。業者の選び方は空き家買取業者の選び方にあります。
対策3:解体して更地にする
建物がなくなれば、建物を理由にした特定空家等の助言・指導や勧告の対象にはなりません(空家等は建築物とその敷地を指します。第2条第1項)。ただし、更地は住宅用地ではなくなるため、住宅用地の特例は使えません。費用の比べ方は解体費用シミュレーターで確かめられます。
ご自身の空き家が立地・築年数・老朽化の度合いからどの対策に向いているかを、まずは当てはめて考えてみましょう。
参考・出典
- e-Gov法令検索 - 空家等対策の推進に関する特別措置法(第2条・第5条・第9条・第13条・第22条・第30条)
- e-Gov法令検索 - 地方税法(第349条・第349条の3の2・第350条・附則第18条)
- e-Gov法令検索 - 不動産登記法(第76条の2・第76条の3・第164条)
- e-Gov法令検索 - 民法(第717条)
- 国土交通省 - 管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)
- 国土交通省 - 空き家対策
- 法務省 - 相続登記義務化
- 総務省統計局 - 令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果(空き家数・空き家率)
- ラクウル公式サイト(買取の仕組み・よくある質問)