売却・活用 読了時間:約14分

古家付き土地の売却|解体せずに売る・解体費用は誰が払う・税金と3,000万円特別控除・注意点

この記事は、空き家などの古い建物が建ったままの土地を、解体せずに売りたい方に向けています。古家付き土地は、建物を残したまま土地として売り出す売り方で、売主が先に解体工事をする必要はありません。解体費用を誰が払うかは、売買契約で決めます。相続した空き家は、条件を満たせば売却益から最高3,000万円を控除できます(国税庁 No.3306)。古家付きのまま売った後、譲渡の翌年2月15日までに耐震基準を満たすか全部の取壊し等が行われる売り方も、令和6年1月1日以後の譲渡から対象になりました。

気になること原文に書かれていること根拠
相続した空き家の3,000万円特別控除家屋を耐震基準を満たすものとして売る、または家屋を取り壊して敷地を売る。令和6年以後の譲渡は、売った後に譲渡の翌年2月15日までに耐震基準を満たすこととなる、または全部の取壊し等が行われる場合も対象国税庁 No.3306
売主が先に解体して売る場合の取壊し費用「建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用」は譲渡費用に含まれ、売った金額から差し引いて譲渡所得を計算する国税庁 No.3202
固定資産税住宅用地は課税標準が価格の3分の1、200平方メートル以下の部分は6分の1。勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等の敷地は除かれる地方税法349条の3の2
建物の不具合引き渡した物が契約の内容に適合しないとき、買主は修補などの追完・代金の減額・損害賠償・解除を求められる民法562〜564条

出典:国税庁タックスアンサー No.3306・No.3202(令和8年4月1日現在法令等)、e-Gov法令検索 地方税法・民法(2026年10月2日取得)。個別の事情で結論が変わることがあるため、実際の申告は税務署・税理士にご確認ください。

解体せずに売れる?解体費用は誰が払う

建物を残したまま、土地として売り出せます。解体してから更地で売るか、古家付きのまま売るかは、売主が選べます。

解体費用を誰が払うかは、売買契約で決める

古家付きのまま売って買主が解体する場合は、買主が解体工事の発注者になります。ただ、買主から「解体費用の分を値引いてほしい」と求められることがあり、値引きの幅は交渉で決まります。この記事では解体費用の金額を載せません。金額は解体業者の見積りで決まります。

売主が先に取り壊して更地で売る場合、国税庁 No.3202 は「建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用」を譲渡費用の例に挙げています。譲渡費用は、売った金額から差し引いて譲渡所得を計算します(詳しくは古家付き土地を売ったときの税金)。

見積りの金額は解体費用シミュレーターで試算できます。自治体の補助の探し方は空き家解体工事の費用相場と補助金に、業者の比べ方は解体工事比較ナビとはにまとめています。

解体したら滅失登記

不動産登記法57条は、建物が滅失したときは「表題部所有者又は所有権の登記名義人」が、滅失の日から一月以内に建物の滅失の登記を申請しなければならない、と定めています。売る前に自分で取り壊すなら、名義人である売主が申請する側です。残したまま売って買主名義になった後に買主が取り壊すなら、名義人は買主です。契約書で、解体の時期と費用の負担を決めておきましょう。

古家のまま買い取ってもらう方法

仲介で買主が見つからない古家付き土地は、不動産会社に買い取ってもらう方法があります。空き家買取専門のラクウルは、公式サイト(2026年10月2日に確認)で、買い取れる物件に「旧耐震・築古物件」を挙げ、買取の仕組みを「自社買取であるため仲介手数料などの諸費用がかからず」と説明しています。事例にも「相続した古家の買取」が載っています。

公式サイトには「売主様は、ご売却後は一切の責任を持たない」との記載がありますが、契約不適合責任の扱いは書かれていません。契約書で責任の範囲を確認してください。相談の際は、建物の状態と所在地を伝えて、買取の可否を確認してください。

3,000万円特別控除は古家付きのままでも使えるか

相続した空き家(被相続人居住用家屋)を売る場合、国税庁 No.3306 は、古家付きのまま売る売り方を含め、次の売り方を対象にしています。

売り方家屋に求められること添える書類(抜粋)
家屋を残したまま売る譲渡の時に一定の耐震基準を満たしていること被相続人居住用家屋等確認書、耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
家屋を残したまま売り、売った後に直す・壊す(令和6年1月1日以後の譲渡)譲渡の時から譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、耐震基準を満たすこととなる、または全部の取壊し等が行われること被相続人居住用家屋等確認書、耐震基準適合証明書等または取壊しをした旨を証する登記事項証明書等
家屋を取り壊してから敷地を売る取壊し等の時から譲渡の時まで、敷地が建物・構築物の敷地の用に供されていないこと被相続人居住用家屋等確認書

出典:国税庁 No.3306(令和8年4月1日現在法令等)。確認書は売った資産の所在地の市区町村長が交付します。

No.3306 は、2番目の売り方の「取壊し等を行ったこと」を誰が行うかまでは書いていません。買主に解体してもらう売り方で使うときは、売買契約にどう書くかを含め、税務署・税理士にご確認ください。

売り方にかかわらず必要な要件(抜粋)

令和6年1月1日以後の譲渡で、相続人の数が3人以上のときは、控除は2,000万円までです。特例を受けるには確定申告が必要です。要件の細かい読み方と計算例は相続した空き家を売るときの3,000万円特別控除にまとめています。

古家付き土地を売ったときの税金

国税庁 No.3202 によると、土地や建物を売ったときの譲渡所得は、ほかの所得と分けて(分離課税で)計算します。譲渡所得の金額は、売った金額(収入金額)から取得費と譲渡費用を差し引いて求めます。取得費が分からないとき、または実際の取得費が譲渡価額の5パーセントよりも少ないときは、譲渡価額の5パーセントを取得費(概算取得費)にできます。

所有期間は、譲渡した年の1月1日で5年を超えると長期譲渡所得、5年以下だと短期譲渡所得に分かれ、税金の計算も別々です。相続で取得したものは、原則として被相続人が取得した日から数えます。売却額別の税額の早見は家を売る税金はいくら?に、相続不動産の譲渡所得の試算は相続不動産の譲渡所得の計算にあります。

消費税については、消費税法4条1項が課税の対象を「事業者が行つた資産の譲渡等」としています。また6条1項は、別表第二に掲げる資産の譲渡等には消費税を課さないとし、別表第二の一に「土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け」が載っています。建物の部分を含め、売主が事業者かどうかで扱いが変わるため、個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

契約不適合責任で気をつけること

民法562条1項は、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないとき、買主は売主に、目的物の修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しによる履行の追完を請求できる、と定めています。追完がされないときは代金の減額(563条)、損害賠償と解除(564条)も求められます。

買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないと、これらを請求できなくなります。ただし、売主が引渡しの時に不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかったときは別です(566条)。

古家付きで売るときは、建物の傷みをどこまで買主に伝え、契約書にどう書くかが、後の責任の範囲に関わります。免責の特約の考え方は契約不適合責任の免責特約とはにまとめています。

古家付き土地とは何か

空き家を売ろうにも、まとまった解体費用の負担が重くてためらっている方もいるのではないでしょうか。実は建物を解体せずに売る方法もあります。

古家付き土地とは、使用できる状態にある建物(古家)を残したまま、土地としての価値を主体として売り出す売却手法です。解体費用を先に払わずに売り出せるため、売却の準備を短くできる場合があります。

登記上は建物が存在する状態ですが、売買の実態としては「土地の売買」として扱われます。

「古家付き土地」と「中古住宅」の違い

古家付き土地と中古住宅の最大の違いは、建物の価値を見込むかどうかです。古家付き土地では建物の経済的価値を見込まず、買主が解体または活用するという前提で売り出します。一方、中古住宅は建物の居住性・リフォーム価値を評価した上で売り出します。

どんな物件が該当するか

登記上の注意点

古家付き土地として売却しても、建物は登記上残ります。建物を取り壊したときは、所有権の登記名義人が滅失の日から1か月以内に滅失登記を申請します(不動産登記法57条)。契約前に、解体の時期と費用の負担を明確にしておきましょう。

解体せずに売るメリット

古家付き土地として売却する最大のメリットは、売主が解体工事の費用を先に負担しなくて済む点です。

解体費用を先に払わなくてよい

建物の構造や広さで解体費用は変わります。古家付き土地として売れば、この費用を売主が先に出す必要がなくなります。金額は解体費用シミュレーターや業者の見積りで確かめられます。

固定資産税の住宅用地の特例が続く

地方税法349条の3の2は、専ら人の居住の用に供する家屋などの敷地の用に供されている土地(住宅用地)の固定資産税の課税標準を、価格の3分の1とすると定めています。住宅用地のうち200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)は6分の1です。固定資産税の賦課期日は1月1日です(359条)。

建物を取り壊して更地にすると、家屋の敷地の用に供されている土地ではなくなるため、特例の対象から外れます。適用の細かい扱いは市区町村にご確認ください。

一方、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づいて、管理不全空家等(13条2項)や特定空家等(22条2項)として勧告を受けた建物の敷地は、条文で住宅用地から除かれています。古家を放置したまま売らずにいると、この対象になるおそれがあります。

売却までの手間が省ける

解体工事には業者選定・見積り・工事の期間が必要です。古家付き土地として売り出すことで、売却準備の時間を短縮できます。急いで現金化したい場合には有効な選択肢です。

古家付き土地のデメリット

古家付き土地には売却しやすい側面もありますが、注意すべきデメリットもあります。

買い手が限られる

古家付き土地は「解体費用を自分で負担する」ことが前提のため、購入後すぐに住みたい一般購入者よりも、投資家・建売業者・リノベーション業者などに買い手が限られる傾向があります。エンドユーザーへの直接売却は更地や中古住宅より難しくなります。

値引き交渉されやすい

買主側から「解体費用分を値引いてほしい」という交渉が入りやすいのが実情です。解体費用の見積りを事前に取り、価格設定に反映しておくことが重要です。

売却期間が長くなる可能性がある

ターゲット層が絞られるため、更地と比べると成約までの時間がかかるケースがあります。特に地方・郊外の物件では需要が少なく、売れ残りリスクが高まります。売れ残ったときの選択肢は田舎の空き家・土地が売れない場合の対処法にまとめています。

アスベスト(石綿)の事前調査

大気汚染防止法18条の15は、建築物を解体する工事の元請業者に、石綿などの特定建築材料の有無を調べて、結果を発注者に書面で説明することを義務付けています。発注者は調査に要する費用を適正に負担することなどで、調査に協力しなければなりません(同条2項)。石綿が見つかった場合は処理の費用がかかり得るため、買主へ事前に伝えておきましょう。

解体費用の負担や値引き交渉を避けたい場合は、古家を解体せず現状のまま買い取ってもらえるかを、メールで聞いてみる方法もあります(古家のまま買い取ってもらう方法)。

更地にして売る場合との比較

古家付き土地と更地にしてから売る場合の違いを整理します。

費用・手間の比較

売却しやすさの比較

更地は一般の住宅購入者にも売りやすく、融資を使った購入もしやすいため、成約率が高い傾向があります。一方、古家付き土地は買主層が限られますが、解体費相当を価格に反映できれば収支的には同等になることもあります。

判断基準

解体後の更地価格が解体費用を上回る地域(都市部・需要の高いエリア)では更地売却が有利です。地方・郊外で更地にしても需要が低いエリアでは、解体費をかけずに古家付き土地として売り出す方が合理的です。

古家付き土地が売れやすい条件

古家付き土地として売却が成功しやすいケースを解説します。

立地が良い(駅近・都市部)

利便性の高いエリアであれば、建売業者・投資家が土地の取得を目的として購入するニーズがあります。駅に近い物件や幹線道路沿いの物件は古家付きでも売れやすい傾向があります。

建物が比較的新しい

建物がリノベーション可能な状態であれば、古民家再生・DIYリフォームを希望する買主にも訴求できます。解体前提ではなく居住利用前提の買主も見込めます。

自治体の解体費補助制度がある

空き家の解体費補助金を用意している自治体では、買主が補助金を活用して解体できるため、購入ハードルが下がります。物件所在地の補助制度を事前に調べて、売却広告に記載するのが有効です。

解体費補助の確認先

解体費補助の有無や補助額は、自治体によって異なります。物件所在の市区町村の空き家対策担当窓口や自治体ウェブサイトでご確認ください。探し方は空き家解体工事の費用相場と補助金にあります。

売却価格の設定の考え方

古家付き土地の価格設定は、土地の評価額から解体費相当額を差し引いて考えるのが一つの方法です。

基本的な考え方

古家付き土地の売却価格の目安は「更地としての価格 − 解体費用相当額」です。この記事では価格の例は載せません。更地としての価格は不動産会社の査定で確かめ、解体費用相当額は業者の見積りで確かめます。

実際の査定では交渉余地を残す

買主から解体費相当の値引き交渉が想定されるため、最初の売り出し価格には交渉余地を織り込んでおくことをおすすめします。複数の不動産会社に査定を依頼し、相場感を把握した上で価格設定を行いましょう。査定の仕組みは不動産の売却価格査定の仕組みと複数社比較が重要な理由にまとめています。

建物状況調査(インスペクション)の活用

売却前に既存住宅状況調査(インスペクション)を実施しておくと、建物の状態を客観的に示せるため、値引き交渉に根拠を持って対応できます。費用は依頼先の見積りでご確認ください。

ご自身の物件の売却と賃貸のどちらが手元に残るかは、売却 vs 賃貸 収支比較で試算できます。

参考・出典

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