実家じまいの手順と費用|何から始める・費用は誰が払う・補助金・やってはいけないこと・業者の選び方
この記事は、親の家(実家)の片付けや売却を考え始めた方に向けています。最初に確かめたいのは、親が存命か、亡くなった後かです。存命のうちは親の家と財産は親のもので、亡くなった後に相続人が数人いると、相続財産は相続人の共有になります(民法898条)。誰がいくら払うかは、この違いと、遺産分割の内容で変わります。相続放棄を考えているうちに家財を処分すると、単純承認とみなされる場合があります(民法921条1号)。自治体には、家財の処分費用を補助する制度もあります。
| 気になること | 原文に書かれていること | 根拠 |
|---|---|---|
| 片付けの費用は誰が払う | 相続人が数人のとき、相続財産は共有に属する。相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する(相続人の過失によるものは除く) | 民法898条・885条 |
| 相続放棄を考えているが、先に片付けたい | 相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなす。ただし保存行為は除く | 民法921条1号 |
| 見つけた遺言書の封が閉じている | 封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できない。家庭裁判所外で開封した者は5万円以下の過料 | 民法1004条3項・1005条 |
| 家の名義変更(相続登記) | 相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料 | 不動産登記法76条の2・164条 |
| 家財を運んでもらう業者 | 一般廃棄物の収集または運搬を業として行うには、その区域を管轄する市町村長の許可が必要 | 廃棄物処理法7条1項 |
出典:e-Gov法令検索 民法・不動産登記法・廃棄物の処理及び清掃に関する法律(2026年10月2日取得)。個別の事情で結論が変わることがあるため、実際の手続きは家庭裁判所・法務局・専門家にご確認ください。
実家じまいは何から始める
最初に確かめるのは次の3つです。順番に答えが出ると、片付けや売却の段取りが決まります。
1. 親は存命か、亡くなったか
存命なら、親本人の意向が出発点です。親の家の売却や業者との契約は、本人が判断できる状態で結ぶ必要があります。民法3条の2は、法律行為をした時に意思能力がなかったときは、その法律行為を無効とすると定めています。判断が難しくなる前の備えは家族信託の費用に、すでに判断が難しい場合の売却は親が認知症で家を売りたいときにまとめています。
2. 相続放棄を考えるか
亡くなった後は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続を単純承認・限定承認するか放棄するかを決めます(民法915条)。この期間は、利害関係人などの請求で家庭裁判所が伸ばせる場合があります。放棄を考えている間は、家の中のものを処分しないでください(詳しくはやってはいけないこと)。
3. 相続人は誰か、遺言書はあるか
相続人が数人いれば、片付けや売却は相続人全員に関わります。遺言書の有無と相続人の範囲を先に確かめてから、家財に手を付けましょう。相続登記は、相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があります(不動産登記法76条の2)。自分で申請する手順は相続登記を自分でやる方法にまとめています。
費用は誰が払う
片付けや解体の費用を誰が負担するかは、状況で変わります。条文が定めている範囲と、決まっていない範囲を分けて整理します。
親が存命のとき
親の家と家財は親の財産です。片付けの費用も、親の財産や親の意向から考えるのが出発点です。子が立て替えるときは、親の了解を得て、領収書を残しておくと後で整理しやすくなります。
亡くなった後、遺産分割が済む前
相続人が数人いるとき、相続財産は共有に属し(民法898条)、各相続人の共有持分は法定相続分などで決まります。遺産の分割は、共同相続人の協議で行い、協議が調わないときは家庭裁判所に請求できます(民法907条)。
費用について民法885条は、相続財産に関する費用は「その財産の中から支弁する」と定めています。ただし、相続人の過失によるものは除かれます。片付けの費用がこの「相続財産に関する費用」にあたるか、立て替えた相続人にどう精算するかは、条文からは一律に決まりません。立て替える前に、相続人全員で精算の方法を決めておきましょう。
遺産分割が済んだ後
民法909条は、遺産の分割は相続開始の時にさかのぼって効力を生ずる、と定めています。分割で実家を取得した人が、その家の片付けや解体を自分の持ち物として進める形になります。
遺品整理業者の費用の目安
費用は、物件の広さだけでなく、荷物の量・作業内容・搬出の条件によって変わります。公開されている事例のうち、提携先の一括見積もりサイト「遺品整理のコンシェルジュ」の公式サイト(2026年10月2日に確認)が載せている4件の費用目安は次のとおりです。
| 事例 | 費用目安(税込) | 作業人数・作業時間 |
|---|---|---|
| 4LDK規模の遺品整理(物量多め) | 25万〜35万円 | 10名・3日間 |
| マンションの生前整理 | 15万〜25万円 | 7名・2日間 |
| 1K規模の遺品整理 | 5万〜10万円 | 2名・1日間 |
| 立ち会いなしの空き家片付け | 10万〜15万円 | 5名・1日半 |
出典:遺品整理のコンシェルジュ公式サイト「ご利用事例」。公式サイトは「料金や作業内容は、間取りだけで決まるものではありません」と注意しています。公的な統計ではなく、あなたの家の費用を示すものでもありません。
費用に影響する要因
- 荷物の量と種類(家電・家具の数、廃棄物の種類)
- 作業人員の数と日数
- 特殊清掃(孤独死・長期放置)が必要な場合は別途費用
- 買取査定によるキャッシュバック(家電・家具・骨董品など)
複数業者の見積もりが必須
遺品整理業者の料金は業者によって大きく異なります。複数社から見積もりを取り、作業内容・スタッフ数・追加費用の発生条件を確認してから契約しましょう。
自治体の補助金(家財の処分・解体)
空き家の家財の処分や解体に、費用の一部を補助する自治体があります。2026年10月2日に自治体の公式ページで確認できた2つの制度を挙げます。内容と条件は自治体ごとに違うので、お住まいの市区町村のページでご確認ください。
| 制度 | 補助の内容 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 東京都 空き家家財整理・解体促進事業 | 家財整理は費用(消費税を除く)の2分の1、上限5万円。解体は2分の1、上限10万円 | 東京都空き家ワンストップ相談窓口に相談し、都内の空き家の家財整理または解体を実施する空き家所有者 |
| 呉市 空き家家財道具等処分支援事業 | 家財道具等の処分費用の1/2、上限10万円(予算の範囲内) | 交付決定後に空き家バンクへ登録、または宅地建物取引業者と媒介契約を締結。処分する前に申請が必要。解体予定の物件は対象外。令和8年12月15日まで |
出典:東京都住宅政策本部「東京都空き家家財整理・解体促進事業」、呉市「呉市空き家家財道具等処分支援事業」(2026年4月10日更新)。呉市は、申込状況によって期限前に受付を締め切る場合があるとしています。
呉市の例のように、処分する前に申請が必要で、空き家バンクへの登録や不動産会社との媒介契約が条件になる制度があります。業者に頼む前に、自治体の窓口で補助の有無と条件を確かめてください。呉市の補助対象経費には、一般廃棄物処理業者による処分・運搬費用も含まれています。
解体の補助を探すときは、空き家解体工事の費用相場と補助金の活用方法と、都道府県別 空き家解体の補助金一覧が使えます。
やってはいけないこと
相続放棄を考えているうちに、家財や不動産を処分する
民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなす、と定めています。ただし保存行為は除かれます。単純承認をすると、無限に被相続人の権利義務を承継します(民法920条)。何が「処分」にあたるかは事情で変わるため、放棄を考えているうちは、売却・廃棄・業者への依頼を止めて、家庭裁判所や専門家に確認してください。
放棄した後も、放棄の時にその財産を現に占有しているときは、相続人などに引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存する義務があります(民法940条)。手続きは相続放棄は自分でできる?にまとめています。
相続人に黙って、家財や形見を処分する
相続人が数人いれば、家の中のものは相続人の共有です(民法898条)。一部の相続人だけで捨てたり分けたりすると、後で「あれはどこへ行った」という争いのもとになります。形見分けは全員で立ち会える機会を設け、分けたものを記録してください。
封印のある遺言書を、自分で開ける
封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できません(民法1004条3項)。家庭裁判所外で開封した者は、5万円以下の過料に処されます(同1005条)。
許可のない業者に、家財の運搬を頼む
廃棄物処理法7条1項は、一般廃棄物の収集または運搬を業として行う者は、その区域を管轄する市町村長の許可を受けなければならない、と定めています。ただし、環境省令で定める者などは例外です。許可の有無は、見積もりの段階で業者に確かめましょう。
相続登記を後回しにし続ける
相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料に処されます(不動産登記法76条の2・164条)。売却するときも、名義変更は避けて通れません。
業者の選び方
1. 許可の有無を確かめる
家庭から出る家財の収集・運搬を業として行うには、市町村長の許可が必要です(廃棄物処理法7条1項)。自治体によっては許可業者の名簿を公開しています。呉市は、空き家の所在地区ごとに指定された一般廃棄物処理業者の名簿を公開し、補助の対象経費に含めています。許可業者に委託するのか、許可業者と提携しているのかを、見積もりのときに聞いてください。
2. 見積もりは2〜3社で比べる
作業内容・スタッフの人数・追加費用が発生する条件を、見積書で確かめます。比べる社数について、遺品整理のコンシェルジュの公式サイトは「2〜3社程度を比較するのがおすすめ」「4社以上になると情報の整理が大変になり、かえって判断に迷ってしまうケースが多い」と説明しています。
3. 補助金を使うなら、契約の前に自治体へ確認する
呉市のように処分する前の申請が必要な制度があります。業者と契約して作業を始めてから補助の存在を知っても、対象外になる場合があります。
4. 一括見積もりを使う場合の確認事項
遺品整理のコンシェルジュの公式サイトは、遺品整理・生前整理・空き家片付けなどの業者から、条件に合う3社を紹介するとしています。同サイトの説明では、一括見積もりの依頼は無料で、実際に作業を依頼する場合は各業者へのお支払いが発生します。見積もり段階であればキャンセルできますが、業者と正式に契約した後のキャンセルは、各業者の規約で手数料がかかる場合があります。対応エリアは関東7都県・関西6府県・静岡県と、北海道の一部の市町村です。
実家じまいの全体的な流れ
実家じまいは大きく4つの工程に分かれます。各工程は並行して進めることもできますが、順序を意識することが重要です。実家じまいでは、相続登記などの手続きに早めに着手することが重要です。
工程1:相続手続き
相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続の承認か放棄かを決めます(民法915条)。相続税の申告が必要な場合は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納付します(国税庁 No.4205)。不動産の相続登記は、相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内の申請が義務です。遺産分割協議が必要な場合は相続人全員の合意が前提です。
工程2:遺品整理
遺品整理にかかる期間は、物量と人手で変わります。形見分けを先に行い、残ったものを業者に依頼または自力で処分します。
工程3:修繕・クリーニング
売却・賃貸に向けて、最低限必要な修繕とハウスクリーニングを行います。フルリフォームは費用対効果の観点から慎重な判断が必要です。
工程4:売却・賃貸・解体
不動産会社に査定を依頼し、売却・賃貸・解体(更地化)のいずれかを選択します。築年数・立地・市場環境によって最適な方法が異なります。
遺品整理の進め方
遺品整理を効率的に進めるための手順を解説します。
業者依頼 vs 自力整理
遺品整理には「業者に全て依頼する方法」と「家族で自力で行う方法」、および「一部を業者に依頼する方法」があります。
- 業者に全依頼:費用はかかるが、短い日数で終わる(公開されている事例の作業時間は1日〜3日間)。精神的負担が軽い
- 自力整理:費用は安いが時間・労力が大きい。故人との思い出に向き合える
- 部分依頼:家族で形見分けを行った後、残った不用品の処分だけを業者に依頼するハイブリッド方式
整理の優先順位
- 貴重品・重要書類の確保(通帳・印鑑・権利証・保険証券など)
- 形見分け(相続人・親族で形見にするものを分ける)
- リサイクル・買取可能なものの仕分け
- 不用品の処分(自治体のごみ収集・業者依頼)
形見分けと不用品処分の注意点
形見分けと不用品処分を進める際の注意点を解説します。
形見分けのタイミングと進め方
形見分けは相続人・親族全員が立ち会える機会を設けて行うのが理想です。後から「あのものはどこにいった」というトラブルを防ぐため、分けたものを記録しておくと安心です。
不用品処分の方法
- 自治体の粗大ごみ収集:費用は安いが予約が必要で時間がかかる
- リサイクルショップへの売却:家電・家具・食器・衣類など状態が良いものは買取可能
- フリマアプリ・オークション:価値のあるものは個別に出品すると高値がつく場合がある
- 遺品整理業者への依頼:まとめて処分できるが費用がかかる
処分してはいけないもの
遺産分割が完了する前に、相続財産となる可能性のあるものを処分してしまうと相続トラブルの原因になります。不動産の権利証・株式の証書・通帳・印鑑・保険証券などは必ず確保してから整理を進めましょう。
貴重品・重要書類の探し方と保管
実家の整理では、思いがけない場所から重要な書類や貴重品が出てくることがあります。
探すべき重要書類・貴重品のリスト
- 不動産の権利証(登記済権利証または登記識別情報)
- 預貯金通帳・銀行カード
- 株式・投資信託の証書・報告書
- 生命保険・火災保険の保険証券
- 年金手帳・年金証書
- 借入・ローンの書類(負債の確認)
- 遺言書(公正証書遺言・自筆証書遺言)
- 実印・銀行印・認印
隠し場所として多い場所
布団・枕の下、タンスの引き出しの奥、押し入れの奥、本棚の中(本に挟んである)、金庫・耐火金庫の中など、思わぬ場所に保管されていることがあります。整理の際は全ての収納を確認することが重要です。
封印のある遺言書は勝手に開封しない
封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できません(民法1004条)。家庭裁判所外で開封した者は5万円以下の過料に処されます(同1005条)。見つけた場合は家庭裁判所に検認を請求しましょう。
実家売却に向けた最小限のリフォーム
売却を前提とする場合、大規模なリフォームよりも「売れるための最小限の手入れ」が費用対効果の観点から有効です。
効果が高い最小限の手入れ
- ハウスクリーニング:キッチン・浴室・トイレ・窓を専門業者が清掃。内覧時の印象が大きく改善する
- 壁紙(クロス)の貼り替え:黄ばみや破損がある箇所のみ部分補修
- 庭の草刈り・外構の整理:第一印象(外観)の改善に効果的
- 水回りの軽微な修繕:蛇口の水漏れ・ドアの建付けなど、内覧時に気になる点を修繕
フルリフォームが割に合わない理由
築年数が古い実家にフルリフォームをしても、投資した費用が売却価格に反映されないケースが多くあります。不動産会社に査定を依頼する段階で、どこまで手入れすべきかアドバイスをもらうことをおすすめします。
売却タイミングの判断基準
実家の売却は早ければ早いほど有利なケースが多いです。理由と判断基準を解説します。
空き家期間が長くなるほど不利になる理由
- 建物の劣化が進み、売却価格が下がる
- 維持費(固定資産税・管理費)が積み重なる
- 特定空家に指定されるリスクが高まる
- 3,000万円特別控除の適用期限(相続開始後3年内の12月31日まで)が近づく
- 相続税の取得費加算の特例が使えなくなる(相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売る必要があり、相続税が課税された人が対象。国税庁 No.3267)
売却を急ぐべきケース
3,000万円特別控除や取得費加算の特例を利用できる条件を満たしている場合は、期限内の売却を優先検討しましょう。特に相続税の負担が大きい場合は、特例の活用で節税効果が大きくなります。
相続から現在までの経過期間や、特例の期限までの残り時間を確認し、ご自身の状況がどのケースに該当するか整理しておきましょう。売却の税金と3,000万円特別控除の条件は相続した空き家を売るときに3,000万円特別控除が使える条件と申請方法にまとめています。
遺品整理や解体に着手する前に、家財が残った片付け前の状態のままで買い取ってもらえるかを、メールで確認しておく方法もあります。旧耐震の築古住宅も対象で、自社買取のため仲介手数料はかかりません。詳しくは訳アリ物件買取ラクウルとはにまとめています。